100マイルのギア選びで最も大切にしているのは、走ることに集中できることです。軽さも機能性も大切ですが、僕は長時間使った時に違和感が少ないことを重視しています。特にシューズ、ランニングベスト、ヘッドランプは、長いレースでの快適さと走りやすさに大きく関わると感じています。

今回の信越五岳で選んだ装備と補給について、なぜそれを選び、実際にどう感じたのかを振り返ります。練習とレースの組み立てはトレーニングとレース戦略編に書いています。

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泥だらけのMount to Coast T1とソックス

シューズ|Mount to Coast T1

シューズに求めるのは、まず違和感のないフィット感。そして反発性と安定性のバランスです。僕は、反発が強ければいいとは思っていません。特に下りでは、跳ねすぎると着地が不安定になることがあります。グリップも、強すぎて引っかかるより、必要なところで効き、自然に足を運べることが大切だと思っています。

T1は適度な反発がありながら、ソールの硬さが安定感につながると感じました。走れる林道だけでなく、多少テクニカルなトレイルにも対応しやすい。もっと柔らかいシューズも選択肢にはありましたが、練習から継続して使い、自分で信頼できると感じていたT1を選びました。

長時間走るうえでは、履き始めの反発やクッションだけでなく、それがどれだけ保たれるかも気にしています。T1は、練習から100マイル本番まで使っても、クッション性や反発性が大きく落ちた感覚はありませんでした。

本番の前半は泥だらけでした。Vibram MegagripのTraction Lugは極端に高いラグではありませんが、僕が想像していた以上にグリップし、走りやすく感じました。

長時間濡れたまま走っても、マメはできませんでした。前足部と後足部の締め具合を別々に調整できる点も役立ちました。前半は泥で滑らないように締めすぎて痛くなりましたが、必要な部分だけ緩められたのは良かったです。

一方、今回は爪が2か所黒くなり、一部が剥がれかけました。僕自身は、前半の疲労で後半につま先を石にぶつけることが増えた影響もあるのではないかと考えています。

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次のレースでもT1は有力ですが、新しいM1にも興味があります。走れる後半ではクッションと反発が助けになるかもしれません。一方、急登ではクッションが多すぎると不安定に感じることもあるため、コースや区間によってT1、M1、H1を検討したいと思っています。

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ランニングベスト|THE NORTH FACE HST Fume 6

HST Fume 6は、見た目がレーシーすぎると感じて、それまで少し敬遠していました。ただ、今回100マイルで使ってみると、とても使いやすいベストでした。

僕にとって最も良かったのは、容量や揺れにくさだけでなく、レース中にベストを下ろして作業する必要がほとんどなかったことです。補給や装備の出し入れに手間がかからず、走ることに集中できました。

今回はサポートなしだったので、次のドロップバッグまでに必要な補給を、すべて自分で持つ必要がありました。1時間あたり300〜400kcal程度を想定すると、持つ量もかなり多くなります。その補給の大半を前面に収められたことが、僕には大きかったです。

前面は、片側にボトルポケットと収納が二つあり、合計三つのポケットがあります。補給を前にまとめられるので、背中へ手を回したり、ベストを下ろしたりする場面が少なくなりました。

背面下部の収納は左右に分かれていて、僕は左にヘッドランプ、右にレインウェアを入れていました。山岳アスリートの土井さんがこの方法で問題なく走れることを力説していて、練習で試してみたのですが、実際にヘッドランプは走っているうちに落ちることも揺れることも、体にぶつかることもなく、定位置に収まり続けてくれました。当然、ヘッドランプもレインウェアも背負ったまま取り出し、入れ直すことがスムーズにできました。

今回の100マイルでベストを下ろしたのは、着替えの時と、使わないと思っていたコップを奥に入れてしまい、取る時に使った2回だけです。必要な補給や装備に背負ったまま手が届くことが、ノンストレスでほぼ完全にできるのはこのベストくらいではないでしょうか。実際にこれほど便利だとは思っていませんでした。

3本のチェストストラップでフィットを調整しやすく、長時間背負っても揺れや擦れは気になりませんでした。特別な擦れ対策もしていません。装備を前後にコンパクトに分けることで、ベストの上からレインウェアを着ることもでき、今回の装備と補給は6Lで問題なく収まりました。

MS-i2 “Endurance PRO”

ヘッドランプ|milestone MS-i2/MS-i1/MS-G4

ヘッドランプで重視しているのは、明るさと揺れにくさです。明るくても走るたびに揺れれば気になりますし、軽くても路面が見えにくければ走りづらい。その両方のバランスを見て選んでいます。

今回は、前半にMS-i2、後半にMS-i1を使う計画でした。黒姫のドロップバッグに、バッテリーを入れたMS-i1を用意しておき、そこで本体ごと交換しました。レース中に電池を入れ替える作業を省くためです。後半の夜間走行は前半より短くなる想定だったので、後半には軽いMS-i1を選びました。

MS-i2はMS-i1より明るく、少し黄色みのある光が、雨や霧の中でも見やすく感じられました。今回は前半が大雨だったので、その見え方は良かったです。使用中の明るさの変化も自然に感じ、夜間に使っていて気になることが少ないライトでした。明るさも十分で今回導入して本当に良かったと思えるギアの一つでした。

多少の重さはありますが、今回の100マイルのペースでは揺れも気になりませんでした。重量だけを見れば軽いものもありますが、実際に走った時の見やすさと揺れにくさを含めて、快適に使えたと思っています。

もう一つ、必携の2個目のライトとしてMS-G4を、モバイルバッテリーとあわせて携行しました(MS-G4は充電しながら使用できるのでモバイルバッテリーとの組み合わせが承認されている)。こちらは使わない前提の予備として軽さを優先したもので、今回は一度も点けていません。実際の夜間走行は、MS-i2とMS-i1の充電だけで十分に足りました。

ウェア|長い時間、変わり続ける環境に対応する

長いレースでは、暑さ、寒さ、汗、雨、湿度が次々に変わります。僕がウェアに求めているのは、スタートした時だけでなく、そうした変化の中でも快適に動き続けられることです。最近、ランニングでもメリノウールを選ぶことが増えたのは、そのためです。

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ベースレイヤー|HERENESSのメリノウール・メッシュタンクトップ

今回のウェアの中でも、特に良かったのが、このベースレイヤーでした。

メッシュなので肌に触れる面積が少なく、通気性と肌離れの良さを感じます。汗や雨で濡れても身体にまとわりつきにくく、乾きやすさも含めて、とても使いやすく感じました。

今回の前半は大雨でした。長時間濡れた状態になり、その後も気温や湿度が変わる中を走りましたが、そうした状況に一枚で対応できるところが良かったです。暑い時の通気性だけでなく、寒さや濡れも含めて、長い時間の中で快適に使えることに価値を感じました。

短い時間なら気にならない着心地の違いも、100マイルでは長く付き合うことになります。僕にとっては、肌に近いところの不快感が少ないことも、走ることに集中するための大切な要素でした。

ドロップバッグには同じものをもう一枚用意し、途中で一度着替えました。着替えることで気分も切り替わり、その意味でも良かったと思っています。

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ショーツ|patagonia Endless Run Shorts

ショーツは、長く愛用しているEndless Run Shortsです。インナーなしで履いています。

気に入っているのは、左右と背面のポケットに物を入れても揺れにくいことです。収納があっても、走るたびに中身が動くと気になります。その点、このショーツは荷物を入れた状態でも使いやすく、ウルトラでは定番になっています。

長時間使うものなので、すでに何度も履いて、自分の身体に合うと分かっていることも、選んだ理由の一つです。

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ソックス|THE NORTH FACE Trail Durable Wool Crew

ソックスは、クルー丈のTrail Durable Wool Crewを使いました。僕は長距離では、短すぎない丈が好みです。

汗や雨で濡れた時に、水分を分散してくれるので、短いソックスよりも足裏にダメージが来にくいと思っています。水が入らなくなるわけではありませんが、濡れた状態での履き心地が短いものよりも圧倒的に良いです。

ウールの感触に加え、シューズの中で滑りにくいフィット感、強すぎない圧迫感、足裏の適度なクッションも気に入っています。シューズだけでなく、ソックスとの組み合わせまで含めて、長時間違和感なく履けるものを選びました。

レインウェア|HERENESS

レインウェアもHERENESSを使いました。軽さと通気性、ベストの上から着られることを評価しています。C0撥水を採用していることも、選ぶ際に見ていた点です。

今回のベストには、補給やライトなどを前後に分けて収納していました。その状態で上からレインウェアを着られるので、ベストを下ろさずに着用できたのは便利でした。ベストの収納とレインウェアの着方がつながることで、装備の出し入れにかかる手間も少なくできたと思います。

キャップとサングラス

キャップは、milestoneのoriginal cap MSC-013のオールホワイトです。僕は本気で走る時に帽子をかぶり続けるのが苦手なので、日差しが強い場面を中心に使いました。白いメッシュのタイプで、暑くなりにくいところが気に入っています。

サングラスはSMITHです。路面の凹凸がくっきり見え、僕には着用した方が走りやすく感じられました。

ウェアや小物も、単に軽いものを揃えるというより、長い時間使って気にならず、その時の環境に合わせて扱いやすいものを選んでいました。

おいエナ / 国産梅と蜂蜜

補給|おいエナとジェルを中心に

基本計画は、美味しいエナジードリンク研究所の「おいエナ」を500mLのフラスクで水に薄め、1本を2時間かけて飲むこと。それに1時間にジェル1本を加え、エイドではシャリ玉やみそ汁を補助的に食べました。特別な固形食を多く持つことはせず、この組み合わせを中心に進めました。

おいエナはフレーバーをいくつか混ぜて使いました。どれも1本約550kcalで、ほぼ全量が糖質と考えると1本約135gです。2時間で飲めば約68g/時。ジェル1本を糖質25gと仮定すれば合計約93g/時になります。ジェルの銘柄は未確認で、この数値は概算です。

前半は計画に近い量を摂れていたと思いますが、後半はおいエナが2時間半に1本、終盤は3時間に1本ほどに減り、ジェルも1時間半に1本ほどになりました。同じ仮定なら後半約71g/時、終盤約62g/時。エイド食は含めていません。

今回は吐き気や腹痛といった大きな胃腸トラブルはありませんでした。ただ、後半は食べたい気持ちが薄れ、消化も遅く感じました。無理に入れれば調子を崩しそうな感覚もあり、身体の出力も落ちてきます。計画した数字を最後まで守れたわけではありません。それでも、受け付けられる量を継続できたことは良かったと思います。

TENGUSALT

胃腸も練習する

以前はおいエナを直接飲むこともありましたが、練習で水に薄めて少しずつ飲む方法が自分に合うと気づきました。今回もそれが助けになりました。

ロングランでは本番と同じ補給を実践し、どの強度なら食べられるか、いつ食べると負担が少ないかを確かめました。長い下りの直前に大量に入れると苦しくなりやすいため、登りの前などを中心に補給しました。糖質量だけでなく、濃度、タイミング、走る強度まで含めて練習する必要があると思っています。ロングランの組み立てはトレーニングとレース戦略編で書いています。

電解質はTENGU SALTなどで補い、カフェイン入りのメダリスト製品もエイドごと、おおむね3時間間隔で取り入れました。ただし具体的なナトリウム量、カフェイン総量は未集計です。必要な電解質量は発汗量や飲水量によって変わるため、塩タブレットの個数を誰にでも一律に勧めることはできません。

暑い時期の補給には、まだ答えがない

今回は大きなトラブルなく走れましたが、暑い時期にどう補給するかは今も課題です。運動強度が高すぎれば胃腸に負担がかかる可能性がありますが、暑さ、水分状態、糖質濃度なども関係します。強度を下げればいいだけではなく、制限時間や目標ペースとの兼ね合いもあります。

「固形物の方が胃腸に優しい」と言われることがありますが、僕はその理由が食べ物自体の違いだけなのか疑問に思っています。糖質中心で脂質や繊維の少ないジェルは消化に適することが多い一方、濃すぎたり一度に大量に摂ったりすれば負担になります。固形物を食べるときには、エイドで止まったり、歩いたり、自然にペースを落としたりすることも多い。もしかすると、その行動も食べやすさに関係しているのかもしれません。

食後に少し強度を落とす、固形物を食べたあとはしばらく歩く、といった方法も今後試してみたいです。まだ試していない仮説です。

自分に合う選択を、練習で確かめる

今回のギアに大きな不満はなく、補給も後半に減りながら継続できました。ただ、次のコースや気象条件でも同じ選択が最適とは限りません。

スペックや評判だけでなく、雨、暑さ、夜間、長時間の練習で実際に使い、自分の身体で確かめる。100マイルの長い時間、装備や補給を必要以上に気にせず、走ることに集中するために。それが今回の選択の中心にありました。

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2026/10/16