
山を歩くためのシューズの選び方
この記事で使う言葉
アウトソール靴底のうち、直接地面に触れる部分。
ミッドソールアウトソールと足裏の間にある、クッションの役割をする部分。
ソールアウトソールやミッドソールを含めた、靴底全体のこと。
スタックハイト地面から足裏までの高さ。この記事では、つま先側の高さを目安に「薄め・中間・厚め」と呼び分けます。
ドロップかかと側とつま先側のソールの高さの差。この差がない靴を「ゼロドロップ」と呼びます。
ラグアウトソールにある突起。地面を捉えるために、さまざまな形や深さがあります。
条件を考えてみる
先に、次の3つを考えてみてください。
条件1・地面どんな道を歩く?
整備された道、石や木の根、ガレ場、岩場。
見るポイントソールの安定感・硬さ・グリップ
条件2・荷物どれくらいの荷物を背負う?
日帰りの軽装か、テント泊の装備か。
見るポイント荷物を背負ったときの安定感
条件3・水雨や水に、どれくらい濡れる?
雨や朝露、水に入る場面を考えます。
見るポイント防水性・水の抜けやすさ・乾きやすさ
同じルートでも、荷物や天気によって見るところは変わります。
歩く靴の考え方
軽くて柔らかければ、歩きやすいのでしょうか



靴を履いたとき、軽さや足裏の柔らかさは分かりやすい感触です。足を楽に動かせることも、選ぶうえで大切です。
ただ、舗装された道で数歩歩いたときの気持ちよさだけでは、山で使う場面までは分かりません。
石の多い道を歩くなら、石を踏んだときの当たりをどれくらい抑えたいか。荷物を背負って長く歩くなら、足を置いたときに底が沈みすぎたり、ぐらついたりする感触が気にならないか。使う場面に合わせて、確かめることが増えます。
ここでいう靴底は、地面に触れる部分と、その上で足を受け止める部分です。靴によって、足に合わせて曲がりやすいものもあれば、曲がりにくく、しっかりした感触のものもあります。
柔らかく足を動かせることと、足を置いたときに落ち着くこと。その両方を履き比べてみてください。柔らかさや硬さの違いを感じたうえで、自分が行く山ではどちらを求めたいかを考えます。
見た目の形だけでは、分からないことがあります

くるぶしが出るローカットの靴と、足首まで覆うミッドカット以上の靴。見た目には分かりやすい違いですが、それだけで歩いたときの感触は決まりません。
ローカットにも、底がしっかりしていて、足を置いたときにぐらつきにくいと感じるものがあります。ミッドカット以上では、足首まわりがどう支えられるかに加えて、曲げたい方向へ動かせるかも確かめたいところです。
「山だからミッドカット以上」「軽く歩きたいからローカット」と先に決めず、実際に試着時に歩いてみます。足を置いたときの落ち着きと、足を運ぶときの動かしやすさを、合わせて見る必要があります。
使い方に合いそうな靴を、自分の足で確かめる

歩く場面に合いそうな靴が見つかったら、次は足に合うかを確かめます。用途に合うことと、自分の足に合うことは、それぞれ確認する必要があります。
試着では、立ったときの感触に加えて、紐を締めて歩いたときの足の動きを見ます。
- つま先や足の指が窮屈でないか。
- かかとが大きく浮かないか。
- 横から押される場所や、歩くと当たる場所がないか。
- 靴の中で足が動きすぎないか。
紐の締め方によって足の収まりが変わることもあります。ただし、窮屈さや当たるところがある場合に、紐を強く締めることだけで合わせようとせず、サイズや靴の形も見直す必要があります。
何足か履くと、同じサイズ表記でも、指まわりの広さやかかとの収まりが違うことに気づきます。底の曲がり方や、足を置いたときの感触も変わります。その違いを、自分の足で確かめることが靴選びにつながります。
条件ごとに、靴のどこを見るか
アウトソールと堅牢性




歩く地面に合わせて、地面に触れるアウトソールと、岩や木の根との接触に耐える作りを見ます。
アウトソールの突起をラグと呼びます。泥や緩い土では、ラグが地面に食い込むことと、隙間に詰まった泥が抜けることが必要です。そのため、深さに加えて、ラグ同士の間隔も見ます。一方、舗装路や硬い土の道も歩くなら、深いラグが歩きやすいとは限りません。よく歩く地面に合う形かを考えます。
岩の上では、ラグの深さに加えて、アウトソールに使われるゴムの配合も関わります。同じVibram社のアウトソールでも、ゴムの種類によって特徴が異なります。
例えば、メガグリップ(MEGAGRIP)は、乾いた面と濡れた面でのグリップを重視し、耐久性も備えたゴムです。XS TREKは、グリップと耐久性のバランスに加え、柔軟性を特徴としています。
濡れた岩でのグリップを重視するなら、メガグリップは選ぶ手掛かりになります。ただし、ゴムの名前だけで靴全体の滑りにくさが決まるわけではありません。泥や緩い土を歩くならラグの深さや間隔も見る、というように、ゴムとラグの形を歩く地面に合わせて確かめます。
堅牢性では、岩や木の根に当たりやすいつま先や側面に、どのような補強があるかを見ます。薄い生地がむき出しになっているか、ゴムなどで覆われているか。メッシュや革といった素材名だけでなく、擦れたりぶつかったりする場所の作りを確かめます。
防水か、非防水か

防水膜を備えた靴は、小雨や朝露の草、ぬかるみなどで、外からの水を防ぎたいときの選択肢です。気温が低い時期は、足を濡らさないことも考えたいところです。商品名のGTXやWPは、防水モデルを見分ける手掛かりになります。
一方、防水の靴は蒸れが気になることがあり、履き口から水が入ると抜けにくく、乾くまで時間がかかります。
暑い時期や、水に浸かることを前提にした歩きでは、排水や乾きやすさを考えた非防水の靴が快適なこともあります。防水か非防水かは優劣ではなく、行く山の気温と天気、水に入る場面、行動時間を合わせて考えます。
履き方を整える。かかとを合わせて、締める

どの靴を選んでも、履き方によって足の収まりは変わります。マメや靴擦れ、爪のトラブルの原因はひとつではありませんが、靴の中で足が動いていないか、紐の締め方も確かめたいところです。
まず、かかとを靴の後ろに合わせてから紐を締めます。甲や、ミッドカット以上なら足首まわりも、痛みや圧迫感が出ない範囲で収まりを確かめます。強く締めることを目的にせず、かかとが浮かないか、足が前後左右に動きすぎないかを見ます。
長い下りの前には、足が前へ滑らないかを確かめ、必要に応じて締め直します。かかとが浮く場合は、一番上の穴を使った締め方も選択肢です。ただし、サイズや足の形が合っていないことを、紐の締め方だけで解決できるとは限りません。
靴より、体



地面、荷物、雨や水への濡れ方に加え、もう一つ大きな条件があります。歩く自分の体です。
歩きやすさは、靴よりも体で決まる部分が大きいとわたしは思っています。姿勢を整えて、股関節を使って歩く。下りの足の運びを覚える。クライミングでバランス感覚や三点支持を身につける。ジョギングで体力をつける。こうしたことを少しずつ積むことも大切にしています。
薄い靴で地面を感じる面白さも、厚い靴を頼りにしたい場面も、自分の体で確かめていくものだと思います。足や脚が薄い靴にまだ慣れていない段階では、いきなり長い距離を歩かず、短い距離から試してほしいです。
靴で全部を解決しようとせず、自分の体の変化に合わせていろいろな靴を試す。そのなかで、今の自分と行く山に合う一足を見つけていく、というのがわたしの考えです。
シューズマップ
縦は、つま先側のスタックハイトを目安にした当店の薄め、中間、厚めの分類です。横は、整備された道、石や木の根のある道、ガレ場や岩稜という、地面の違いから候補を見比べるための目安です。
右ほど優れた靴という意味ではありません。泥や濡れた岩への対応は、この横軸とは別に考えます。荷物や足への収まりも合わせて確かめてください。
厚め
整備された道
ガレ場・岩稜
中間
整備された道
薄め
整備された道
モデル別に見る
使う場面ごとに、モデルを見ていきます。薄め、中間、厚めは、つま先側のスタックハイトを目安にした当店の分類です。安定性や荷物の重量上限を表すものではありません。
軽い荷物で、地面を感じて歩く
Topo Athletic CONNECT
歩くこと自体を楽しみたい人への一足です。足裏で地面を直に感じて歩ける、薄いソールのゼロドロップ。かかとのホールドもあります。長い距離や厳しい地面で使うかは、足や脚の慣れも含めて考えたいモデルです。
ALTRA LONE PEAK 9+
ゆったりと地面の感触を楽しんで歩きたい人への一足です。足裏と地面が近く、踏んでいるものの感触が伝わります。足の指まわりにはゆとりがあります。アウトソールにはVibram Megagripを採用しています。
ゼロドロップに慣れていない場合は、短い距離から試してください。幅やかかとの収まりは、実際に履いて確かめます。
Topo Athletic TERRAVENTURE 5
地面の感触を残しながら、足裏の保護も求めたい人への一足です。足裏の保護板が突き上げを抑える作りで、曲がりやすさもあります。かかとはしっかり収まり、前足部にはゆとりがあります。
長い距離を歩く
Topo Athletic TRAVERSE 2
メーカーはハイキング用途とし、前足部の保護板や、耐摩耗性を高めたメッシュを採用しています。
わたしの感想は、ソールが硬めで横振れしにくく、歩く際に安定感があることです。荷物を背負って長く歩くときにも、足元の落ち着きを確かめたいモデルです。
LA SPORTIVA Akasha II
長い距離を歩きたい人や、足幅、甲にゆとりを求める人に試してほしいモデルです。かかとからつま先へ体重が抜け、転がるように足が前へ進む感触があります。補強の入ったメッシュを使っています。足への収まりや、ドロップを含む歩き心地を店頭で確かめます。
ガレ場・岩稜を歩く
LA SPORTIVA BUSHIDO III
ガレ場や岩稜で、接地感と足元の安定を求める人への一足です。足へのフィットがしっかりしていて、石や木の根の上でも足元がぶれにくいと感じます。ソールは薄めで、そのぶん地面を直に感じられます。
タイトな作りなので、足幅が広い人や甲が高い人は、窮屈でないか確かめてください。
LA SPORTIVA TX5 LOW GTX
林道から岩稜帯まで、行動範囲を広くとりたい人への一足です。硬めのソールでぐらつきにくく、岩場でも足元が安定しやすいと感じます。ヌバック革と補強を備えています。軽さを優先する靴とは重さの感触も違います。サイズと足への収まりを試着で確かめます。
防水のローカットで歩く
LA SPORTIVA PRODIGIO HIKE GTX
荷物を軽くし、テンポよく歩きたい人への一足です。ソールが着地の衝撃を受け止め、ニットの履き口で足元が落ち着く感触があります。つま先とかかとに保護を備えます。防水性に加え、暑い時期の蒸れや足への収まりも確かめたいモデルです。
ミッドカット以上で歩く
LA SPORTIVA TX5 EVO MID GTX
重い荷物での縦走や、岩場を含むルートで候補になるモデルです。わたしが感じる特徴は、硬めのソールと、足首まで締められるホールドです。足元の安定感がある一方、足首の可動域は狭まります。軽い荷物の日帰りでは重さが気になることもあるので、動かしやすさも合わせて確かめます。
メーカーはヌバック革、防水膜、Vibram Megagripのアウトソールを採用し、ソールの張り替えにも対応するとしています。
Topo Athletic TRAILVENTURE 2 WP
防水のミッドカット以上で歩きたい人や、つま先にゆとりを求める人への一足です。足首まで包まれ、荷物を背負ったときにも足元が落ち着く感触があります。重さは、ほかのモデルと履き比べて確かめます。暑い時期は蒸れも考えたいところです。
まとめ。店頭で試すのが最善

この記事で整理できるのは、地面、荷物、水という条件と、そのとき靴のどこを見るかまでです。サイズは履かなければ分かりませんし、足幅やかかとの収まりは人によって違います。同じ人でも、行く山と荷物が変われば選ぶ靴は変わります。
靴ごとに向いた使い方はあっても、足に合わなければその良さは分かりませんし、そもそも履けないこともあります。山で体を動かすための道具だからこそ、店頭で実際に履いて、歩いて、確かめるのがいちばん確かだと思っています。
行く山と荷物、これまで履いてきた靴を聞きながら、足の幅やかかとの収まりを一緒に見て選びます。気になるモデルがあれば、履き比べに来てください。


OLYMPUS 275 HILO
OLYMPUS 7
TRAILVENTURE 2 WP
TIMP 6
TRAVERSE 2
PRODIGIO HIKE GTX
Ultra Raptor 3 Mid GTX
Akasha II
TX5 LOW GTX
TX5 EVO MID GTX
CONNECT
LONE PEAK 9+
TERRAVENTURE 5
TERRAVENTURE 4 WP
KING MT 2
BUSHIDO Ⅲ