小辺路(こへち)テント泊、2泊3日。高野山スタートで熊野本宮大社まで
はじめに
こんにちは、ROCK STEPPERSのスタッフ、シイナです。普段はトレイルランニングや登山、クライミングと、山に関わることなら何でも楽しんでいます。お店では主に接客を担当していますが、自分自身がフィールドに出ることも多く、使った道具のことや歩いた道のことをこうしてブログに書いていこうと思っています。
今回のゴールデンウィーク、もともとの予定は大峯奥駈道でした。ずっと憧れていたルートで、準備も進めていました。ところが出発直前に天候が崩れるという情報が入り、前日の夜に急遽小辺路へ変更することになりました。大峯奥駈道は次の機会に取っておこう、と気持ちを切り替えて、翌朝は高野山へ向かいました。
今回のパートナーは、山のセンパイ。100マイルレースを何度も走り切っている、とても強い女性です。2人でテントを担いで、峠をつないで歩きました。

山でのテント泊を2泊するのは、わたしにとって今回が初めてでした。未知の部分もありましたが、それも含めて楽しみにしながら出発しました。
小辺路という道
小辺路は、高野山を起点に熊野本宮大社まで続く熊野古道のルートで、全長は70km弱です。大峯奥駈道の次に厳しいルートと言われています。歩く前は、それなりに覚悟をしていました。
ところが実際に踏み込んでみると、「厳しい」よりも「楽しい」が先に来る道でした。集落がいくつも点在していて、山深い場所に普通の暮らしが続いているのを見ながら歩いていける。ロードが少なく、トレイルの比率が高いため、足元もずっと飽きないです。



歩きながら気づいたことがひとつありました。熊野古道は、ほとんどピークを踏まない道だということです。登山であれば山頂を目指しますが、熊野古道は峠を越えていきます。峠というのは山と山のあいだの鞍部、一番低いところです。山に登ることが目的なのではなく、お参りという目的地に向かうために、もっとも歩きやすいルートとして峠が選ばれてきた。目的地があって、山はその途中にある。そういう道だとわかってから、足元の見え方が少し変わりました。
果無集落のこと
3日間歩いて、一番印象に残っているのは果無集落から果無峠にかけての区間です。
三浦峠を越えて戸塚村へ降りた後、もう一度果無峠へ向けて登り返していきます。その途中に果無集落があります。石畳と木の根が交互に現れる道で、「熊野古道らしい」と言われるときに思い浮かべる風景がそのまま広がっていました。

何が特別だったかというと、集落にまだ人が住んでいることでした。民家があり、生活の気配がある。世界遺産に指定されたエリアのただ中に、今も普通の暮らしが続いている。観光地として整備された場所とは違う、生きた道の感じがしました。

「熊野古道」という言葉から想像していたものが、ここで初めて実感になった気がします。世界遺産と聞くと、どこか遠い話のように感じていましたが、ここでは暮らしと道が地続きになっていました。
2日目の夜、豪雨の中のテント設営
1泊目は穏やかな夜で、テントの中でゆっくり眠れました。問題は2泊目です。
夜に入ると強風と雨が重なり、テントの設営がかなり難しい状況になりました。時間雨量14mmほどの豪雨で、風も吹いている。雨の中でポールを立てようとしても、なかなか思うように進みません。どうしたものかと思っていたところに、近くにいたヨーロッパ系の外国人ハイカーが声をかけてくれました。
「あの小屋の中で組み立ててから移動するといい」。
近くに観音堂という小さな小屋があることを教えてくれて、そのまま一緒に作業してくれました。小屋の中でポールを立て、テントの形を作ってから外へ運ぶ。その手順のおかげで、設営は思ったより早く終わりました。

使ったテントはNEMO TANI。2人で分けると1人あたり約600g、設営もシンプルで、豪雨の中でも浸水はありませんでした。壁が垂直に立ち上がる設計のため室内は広く感じられ、嵐の夜でも落ち着いて過ごせました。知らない誰かに助けてもらいながらテントを立て、強風と雨をやり過ごしたあの時間は、3日間でいちばん鮮明に残っています。
3日目の朝、熊野本宮大社へ
3日目、朝4時ごろに目が覚めると、前夜の雨はちょうど上がっていました。
少し寒さはありましたが、雨具を着て出発。歩き始めるとすぐに体が温まり、しばらくして脱ぎました。果無峠を越えて降りていくと、熊野本宮大社に着いたのは朝の8時ごろ。3日間を通じて、予想よりもスムーズに距離を刻めていました。
センパイは上りがとても強く、急登でもずっと一定のペース。わたしはついていけない場面もありましたが、上で待ってもらい、なんとか無理なく進めました。普段からトレイルを走っていることもあり、体力的にとても苦しいという場面は特に感じませんでした。


本宮大社に祀られている上四社をお参りし、その後、旧社地である大斎原にもお参りしました。歩いてたどり着いた後のお参りは、車でくるのとは少し違う感覚がありました。この距離を自分の足で来たということが、どこかに残っている感じです。友人に迎えにきてもらい、温泉と食事で身体を整えてから帰路につきました。来年の熊野川の下見もできたので、次に向けてのイメージも少し具体的になっています。
持っていったもの(補足)
ザックはGossamer Gear Type-2 Grit 28Lです。水を除いた状態で6kgちょっとのパッキングになりましたが、3日間通じて肩や腰に痛みは出ませんでした。ショルダーハーネスの幅が広く、チェストストラップが2本ある構造のため、荷重が分散されやすいと感じました。フロントのメッシュポケットも容量があり、行動中に取り出したいものをまとめておくのに使いました。

ウェアは、STATICのアジャストシャツとmaunawearのOctaシャツを主に使いました。Octaは行動中の体温調整がしやすく、汗をかいてもすぐ乾くので3日間着続けられました。アクティブインサレーションは必携品と言っていいほど使えます。持っていない人は手に入れてくださいw

2日目の雨にはTeton BrosのFeatherRain JacketとTrail Bumのレインパンツを合わせて凌ぎました。二つとも軽量で扱いやすい。Trail Bumのレインパンツは少し太めで、脱ぎ履きも楽ちんです。
ポールは最初から使いました。熊野古道に限らず長い距離のハイキングにはポールはとても有利だと思います。荷物がある行程では特に、推進力と安定感の両方で疲れ度合いが変わります。今回のような重さがある行程では、持っている方が楽しむ余裕ができると感じました。
細かいところでは、パイル地の厚手ウールソックスを1足持っていきました。寝るときに履くためのものですが、行動中の靴下が濡れた場合のバックアップにもなります。寝袋の中でも蒸れにくく、翌朝も快適でした。店頭に割とたくさん選択肢があるので是非見てみてください。
おわりに
熊野古道・小辺路は、登山というよりも旅に近い感覚で歩ける道でした。峠を越えながら集落を通り抜けていく。急なルート変更で来ることになりましたが、この道の雰囲気はわたしには合っていたと思います。大峯奥駈道への気持ちはまだ残っていますが、大峯奥駈道は次の機会として楽しみにしておきます。

女性2人でのテント泊でしたが、装備をしっかり準備していれば楽しめるルートだと感じました。ただ、普段から体を動かしている方が、より余裕を持って歩けると思います。装備についてはお店でも相談を受け付けていますので、気になることがあればぜひ声をかけてくださいね。

