携帯浄水器は、山の中で見つけた沢や湧き水などの自然水をろ過して、安全に飲める水に変える道具です。登山中に携帯浄水器を使うことで、すべての水を最初から背負っていく必要がなくなり、必要な分だけ現地で補給するという柔軟な行動が可能になります。

この記事では、Sawyerの3つの浄水器モデルを比較し、それぞれの特徴や選び方をなるべくわかりやすく解説していきます。登山だけでなく防災用途としての使い方、そして便利なCNOCとのコラボモデルについてもご紹介します。

「沢の水って本当に飲んで大丈夫?」と少し不安に感じている方も、携帯浄水器の仕組みや選び方を知れば、きっと安心して使えるはず。この記事がその一歩になれば嬉しいです。

山で“水”をどう持つか?軽さと命を守る携帯浄水器という選択

登山では「水」がとても大切です。体を動かし続けることで失われる水分は想像以上に多く、こまめな水分補給は、体調を崩さず安全に山を歩くうえで欠かせません。

ただ、水は重くてかさばる装備のひとつでもあります。500mlのペットボトル1本で約500g。縦走登山やテント泊登山などでは、1リットル〜2リットル以上の水を持ち歩くのが一般的で、それだけで1〜2kgの荷物になります。軽量化を意識している登山者にとって、水の重さは避けられない大きな悩みです。

そんな中で注目されているのが、「携帯浄水器」という選択肢です。

近年では「軽量で扱いやすい」「メンテナンスが簡単」「山の水を有効活用できる」などの理由から、携帯浄水器を取り入れる登山者が増えています。

私自身も、登山ではSawyerの携帯浄水器を長く使い続けています。アメリカのアウトドアブランドで、浄水性能が高く、それでいてとても軽い。中でも「Sawyer Mini」と「Micro Squeeze」は、その扱いやすさと信頼性はフィールドで実感しています。

Sawyerの携帯浄水器とは?基本情報をおさらい

Sawyer(ソーヤー)ってどんなブランド?

Sawyer(ソーヤー)は、アメリカ・フロリダ州に本社を構えるアウトドアギアメーカーです。特に、フィルター技術に強みを持ち、浄水器や虫よけ、日焼け止めなど、自然の中で身体を守るための製品を数多く展開しています。

Sawyerの携帯浄水器は、登山やキャンプだけでなく、国際的な災害支援や人道支援の現場でも採用されており、世界中で信頼されているブランドです。

日本でも、ハイカーやキャンパーの間で知られるようになり、「軽量で信頼できる浄水器」として選ばれることが増えてきました。


共通するフィルター構造とその仕組み

Sawyerの浄水器に共通して使われているのが、「Hollow Fiber Membrane(中空糸膜)」というフィルター構造です。これは、極細のストローのような繊維を束ねたもので、微細な穴を通して水をろ過します。

この構造によって、0.1ミクロン(=0.0001mm)以上の微生物や不純物をしっかり除去することができ、

  • バクテリア(大腸菌など)

  • 原生動物(ジアルジア、クリプトスポリジウムなど)

といった、自然水に含まれている可能性のある病原体を除去する性能があります。

ただし、ウイルスや化学物質、塩分(海水)などは除去できないため、あくまで“沢や湧き水などの淡水源”を前提とした使用になります。


Sawyer製品の特長と他との違い

Sawyerの浄水器には、いくつかの特長があります。

● 圧倒的に長いフィルター寿命

最大で100,000ガロン(約38万リットル)の水をろ過できる設計になっており、一般的な使用であれば何年にもわたって使い続けることができます。
これは、同ジャンルの他社製品と比較しても非常に長寿命です。

● とにかく軽量・コンパクト

どのモデルも100g以内と非常に軽く、かさばりません。ミニマルな装備を求める登山者や、荷物の軽量化を重視するハイカーにとっては大きな魅力です。

● 自分で洗える=メンテナンスが簡単

Sawyerの浄水器は、付属のシリンジなどを使って、「バックフラッシュ」と呼ばれる逆洗浄を行うことで、目詰まりを防ぎ、ろ過スピードを回復させることができます。
そのため、使い捨てではなく繰り返し使える=経済的かつエコでもあります。


登山との相性が良い理由

登山では、荷物の重さをできるだけ減らしたい一方で、「水分の確保」という非常に重要な課題があります。Sawyerの携帯浄水器は、以下の点で登山にぴったりです。

  • 本体があれば、ペットボトルでも使える

  • ペットボトルと同じ口型のウォーターキャリーが多く市販されている

  • 誰でも簡単にろ過できる

特にMicro SqueezeやMiniは、ザックのポケットに収まるサイズ感で、ペットボトルなどにつけっぱなしでも使えます。

Sawyer 3モデルの比較と選び方

まずは3つのモデルを簡単に紹介します

Sawyerの携帯浄水器には、大きく分けて以下の3つのモデルがあります。いずれも中空糸膜(Hollow Fiber Membrane)を使った同じろ過方式で、使い方もよく似ていますが、それぞれに個性があります。

Sawyer Mini(ソーヤー ミニ)

とにかく軽くてコンパクト。ろ過スピードはやや遅め。価格も手頃で、初めての1本として選ばれることも多いモデル。

Sawyer Micro Squeeze(マイクロ スクイーズ)

Miniよりもろ過スピードが速く、詰まりにくくなったバランス型モデル。軽さと実用性のバランスを取れる。

Sawyer Squeeze Filter(スクイーズ フィルター)

シリーズの中でもっともろ過スピードが速く、濁った水にも対応しやすい。容量の多い水袋と一緒に使えば、複数人での使用などにも。


各モデルの基本スペックを比較してみる

それぞれのモデルを比較しやすくするために、スペックの違いを一覧にまとめました。どれも同じSawyerのフィルター構造ですが、使用感には明確な違いがあります。

モデル名 重量(約) ろ過スピード 耐久性(寿命) サイズ感 向いている用途
Sawyer Mini 41g 遅い 約38万リットル コンパクト とにかく軽量に/価格重視/初めての1本
Micro Squeeze 53g 中程度〜速め 約38万リットル 手のひらサイズ バランス型/軽量&実用性重視
Squeeze Filter 71g 速い 約38万リットル やや大きめ キャンプ/濁った水/ろ過スピード重視

Sawyer Mini:最軽量モデルの実力と限界

Sawyerシリーズの中でもっとも軽くてコンパクトなモデルが「Mini」です。重量は約41gと非常に軽く、手のひらに収まるサイズ感。登山装備の中でも特に軽さにこだわる方にとっては魅力的な選択肢です。

私自身もこのモデルを使っていた時期があり、最初は「これで十分」と思っていました。ただ、実際に山で使っていくうちに感じたのがろ過スピードの遅さと、詰まりやすさです。こまめにバックフラッシュ(逆洗浄)をしないと流量が落ちやすく、少しでも汚れた水を通すと処理に時間がかかることもあります。

構造上はペットボトルなどに装着して直接飲むことも可能ですが、実際には流量がかなりゆっくりで、現実的にはかなり飲みにくいと感じました。どちらかというと、一度容器にろ過して貯めておくような使い方が向いています。


Micro Squeeze:軽さと実用性のバランス型

「Miniだと流量が物足りないけれど、Squeezeほどの大きさはいらない」という方におすすめなのが、このMicro Squeezeです。重量は約53gとMiniよりわずかに重いだけですが、ろ過スピードが大きく向上しており、登山中の水補給がかなりスムーズになります。

私がMiniから乗り換えたのもこのモデルです。たった10gちょっとの違いですが、使い勝手はまったく別物と感じました。バックフラッシュの頻度も少なく、ストレスが少ないのが嬉しいところ。サイズもポケットや小型ポーチに収まるので、パッキング面でも不便はありません。

ペットボトルやソフトフラスクに装着して飲むような使い方も可能です。ろ過スピードはSqueezeほどではありませんが、そのまま飲むスタイルも実用圏内です。


Squeeze Filter:ろ過スピード最優先のモデル

Sawyerシリーズの中で、もっとも流量が多く、濁った水でも安定してろ過できるモデルがSqueeze Filterです。重量は約71gと、Microよりもひと回り大きくなりますが、水を「押し出す」動作が圧倒的に楽で速いのが特長です。

登山中に複数人分の水をまとめて処理したい場合や、水源がやや濁っているようなシチュエーションでは、このSqueezeが頼りになります。容量の大きなウォーターバッグと組み合わせて使えば、より効率的に浄水ができ、テント場や長時間の休憩中などにも活躍します。

また、ソフトフラスクなどに取り付けてそのまま飲むという使い方にも十分対応できる流量があり、行動中の水分補給にも便利です。


どのモデルを選べばいいか迷ったら

各モデルにはそれぞれの特徴がありますが、最終的には「何を優先したいか」によって選び方が決まってきます。

  • とにかく軽さを重視したい方にはMiniただし、ろ過スピードはやや我慢が必要です。

  • ストレスなく浄水したい方にはSqueezeろ過スピードが速く、直接飲むことにも十分対応できます。

  • バランスの良さで選ぶならMicro Squeeze軽さと使いやすさのちょうどいい中間点で、「何とかそのまま飲める」レベルの流量も確保されています。

「ペットボトルやソフトフラスクに取り付けてそのまま飲む」ような使い方を想定している方には、この流量の違いも選び方のヒントになります。私自身の感覚では、Miniは現実的に厳しい、Micro Squeezeはまあまあ飲める、Squeezeは問題なく飲める、といった印象です。

また、Squeezeは重さよりも嵩張ることが私にとってはマイナスになりました。少し大きすぎて、はっきりってしまえば邪魔になります。

Sawyerをもっと便利に使うために

水を汲んで押し出す、Sawyerと一緒に使いたい水袋・ボトル

Sawyerの浄水器は、単体でも使えますが、「どの水袋やボトルと組み合わせるか」で使い勝手が大きく変わります。特に登山では、水源での水汲みやろ過作業をできるだけスムーズにしたいところ。ここでは、私自身がよく使っている製品やおすすめの組み合わせをご紹介します。

● 広口で水を汲みやすいソフト水袋

たとえば「CNOC Vecto」シリーズ(1L/2L・28mmキャップ)やEvernewのウォーターキャリーは、水場での水汲みがとにかく楽。開口部が広いので、ちょっとした沢や浅い水たまりからでも効率よく水を集められます。素材が柔らかくて押し出しやすく、Sawyerとねじ込み式で接続できるので、ろ過用の水袋として非常に使い勝手が良いです。

これは非常に重要な要素です。滝のように落ちてくる水場であればよいのですが、浅い川のような場所だと意外と袋の中に水が入ってきません。口が小さいと相当時間がかかります。そういった意味でも開口部が広い袋は有用です。

商品状は下記より

Cnoc Outdoors Vecto 1L 28mm

EVERNEW Water bag 2L

EVERNEW Water bag 3L

● ボトル型での活用も便利

同じくCNOCの「Vesica 1L」など、ボトル型で折りたたみ可能なソフトフラスクも便利です。こちらは行動中の水分補給用としてSawyerを取り付けたまま飲むこともでき、ザックのポケットにも収まりやすいサイズ。軽量化しつつ、スマートな運用がしやすいアイテムです。

商品状は下記より

Cnoc Outdoors Vesica 1L Water Bottle 28mm

Sawyer×Cnocのコラボキットが発売されました!

ソーヤーの中で最も浄水スピードが速く、重力を利用して浄水できるグラビティシステム対応の「スクィーズフィルター SP129」と、Cnoc Outdoors のフラッグシップモデルでもあるブラダー仕様の「Vecto」を、より分厚くして耐久性を高めた「VectoX」をセットにしたアイテム。
フィルターと接続する部分と、幅広の開口部を持つデュアルオープン式のブラダーは2Lサイズで、一度にたくさんの採水ができるほか、使用後の洗浄も楽。水事情の悩ましいキャンプ場や山中、災害時にたくさんの水を濾過したい時などに重宝します。ハイドレーションとしても使用しやすい形状。付属のクリーニングカップリングを使用してボトルを接続すれば、水が溢れる心配なくダイレクトに浄水を流し込むことができます。



ブラダーのセットと同様、「スクィーズフィルター SP129」が付属。
容量1Lの「Vesica」は、ハイカーに人気のボトルタイプ。柔らかい素材なので、使用しない時は上下に押しつぶすことで約3分の1のサイズにでき、とてもコンパクトに。浄水を必要としない場面では、水筒としての役割も果たします。



ソーヤーのコンパクトモデルの中で最も浄水スピードが速い「マイクロ スクィーズフィルター」。水の入ったパウチを絞り圧力をかけることで、水がフィルターを通り濾過できる仕組みで、小さいながらもスクィーズフィルターと同様の浄水能力を誇ります。 付属するのはクノック製の750MLパウチ「HydriamX」。ソフトで絞りやすい形状ですが、しっかりとした耐久性も兼ね備えており、熱湯にも対応しています。テーパーがかかったデザインで、ランニングベストなどにも収納しやすく、使わない時は小さく丸めてしまうことができます。


 

登山だけじゃない、Sawyer浄水器の防災活用と注意点

Sawyerの携帯浄水器は、登山やアウトドアで使う道具としてよく知られていますが、そのコンパクトさと高性能なろ過能力から、防災用品として備えるという選択肢もあります。

万が一の備えとしても優秀

Sawyerのフィルターは、最大で約38万リットルのろ過が可能とされています。これだけの容量があれば、日常的な登山使用はもちろん、長期間の断水や災害時の生活用水確保にも十分対応できます。

実際に災害支援の現場や国際的な人道支援でも使われており、非常用持ち出し袋にひとつ入れておくだけで、いざというときの安心感が違ってきます。


防災用途で考える際のポイント

登山では軽さと最小構成が優先されがちですが、防災を前提にすると、また少し視点が変わってきます。

  • 飲み水としてだけでなく、手洗いや食器の洗浄、調理水などにも使える

  • Sawyer純正のストローや延長ホース、ボトルなどは、普段は使わなくても自宅や避難所で使うには便利

  • 使用後はしっかり乾燥させて保管しないと、カビや劣化の原因になるので注意が必要です

また、ろ過性能としては「細菌」「原生動物」に対応していますが、ウイルスや化学物質、塩分(海水)は除去できません。
そのため、使用する水源はできるだけ清潔な沢や湧き水、雨水などに限定するのが基本です。

登山との違いに注意

登山では荷物を減らすことが大前提なので、フィルター本体とシンプルな水袋やボトルだけで完結させる方が多いと思います。私自身もそうです。

一方、防災用途では、

  • 「ろ過しながら直接飲む」だけでなく、

  • 「一定量の水をまとめて用意しておきたい」
    といったニーズがあり、アクセサリ付きのセットを備えておく方が、むしろ実用的なこともあります。

Sawyerの製品を登山で使っている方にとっては、使い慣れている道具を防災でも活かせるという点でもおすすめできます。

まとめ:自分に合った携帯浄水器を、信頼できる道具として選ぶ

登山における「水」の重さは、誰にとっても大きな課題です。
その中でSawyerの携帯浄水器は、水を背負わずに歩くという選択肢を現実のものにしてくれる、シンプルで信頼できる道具です。

Mini、Micro、Squeeze。3つのモデルにはそれぞれの特長があり、軽さ・ろ過スピード・使いやすさのバランスをどう考えるかで、選び方も変わってきます。

私自身、これらのモデルを登山で使いながら、「どんな組み合わせが自分にとって快適か」を試してきました。重要なのは、スペックの差よりも、“実際にどこでどう使うか”というリアルな視点です。

Sawyerの浄水器は、防災用途としても活用できます。
使い慣れている道具を、日常や非常時にもそのまま使えるというのは、大きな安心感につながります。

携帯浄水器は、最初はちょっととっつきにくいと感じる方もいるかもしれません。ですが、いざ使ってみると、これほどシンプルで信頼できる道具もそう多くはないと感じるはずです。

ファッションや流行ではなく、“現場でちゃんと使えるギア”として、これからの山道具の選択肢のひとつに。
あなたの登山が、もっと軽く、もっと自由になるために。Sawyerは、その背中をそっと押してくれる道具だと思います。

2025/04/02

PROFILE

山根

ROCK STEPPERS店主。ビールが好き。トレイルランをメインに活動しているが、山遊びはなんでもやりたい。Youtuber活動してみたら意外と面白いのでなんとか続けていく。いつかはどんな形でも良いので超超長距離にトライしたい。