おおさか環状自然歩道を歩いてきた
はじめに
ROCK STEPPERSの山根です。今回は、大阪をぐるりと囲むように続く「おおさか環状自然歩道」という道を歩いてきた話を書きます。全長は約300km。大阪という身近な場所に、これだけ長い距離をつないで歩けるロングトレイルがあること自体、あまり知られていないのではないかと思います。
この旅は、maunawearの阪東さんと一緒に企画したものです。といっても、二人で並んで歩いたわけではありません。約300kmを半分ずつ、阪東さんと分けて歩きました。わたしが前半のスタートから半分、阪東さんが後半からゴールまで。
前半の約150kmを、わたしが3日間で歩いた記録です。
この企画のきっかけは阪東さんでした。阪東さんは過去にこの道を通して歩いたことがあり、わたしも以前から興味があったので、それなら一緒に、と話が進みました。
おおさか環状自然歩道という道

大阪は、山があって、大阪平野が広がっている。平野の周りの山をずっとつないでいくのが、おおさか環状自然歩道です。
北摂の山々を歩き、生駒の山々を越え、そこからダイヤモンドトレール、通称ダイトレに入って、和歌山との県境にあたる紀泉アルプスのあたりまで。こうして書くと壮大ですが、歩いてみて感じたのは、深い自然とは少し違う性格でした。
山も登るのですが、それ以上に、里山から里山へ、集落から集落へとつないでいく道です。場所によっては町にとても近く、かと思えば日本の原風景のような棚田や畑が広がっていて、人の生活と自然がすぐ隣り合っている。「山に登った」という感覚よりも、「歩いて旅をした」という感覚のほうが近い。そういう道でした。
なぜ半分ずつ歩いたのか
二人で通して歩こうとなったとき、面白いことに気づきました。おおさか環状自然歩道のちょうど中間地点あたりに、うちのお店、ROCK STEPPERSがあるのです。約300kmを150kmずつに分けると、ちょうどお店が真ん中になる。
それなら、ここを境にして半分ずつ歩こう、と決まりました。わたしがスタート地点からお店までの前半を、阪東さんがお店からゴールまでの後半を担当する。お店が旅の中継点になるというのが、自分たちでもなんだか面白く感じられました。
1日目 能勢の栗の里から豊能町へ
スタートは能勢の栗の里あたりから。1日目は約40km、時間にして8時間ほど歩きました。
この日に歩いた北摂のエリアは、棚田や畑のあいだを縫うように登山道が続いていて、トレイルがそのまま生活道になっているような場所でした。ノスタルジックという言葉がぴったりで、大阪にこんな風景があるのか、と素直に驚きました。ちょうど桜の季節で、それも本当にきれいで、いい1日目になりました。
道そのものは、舗装路も山道もありますが、険しいところは少なく、よく整備されていて歩きやすい。とくに北摂は道標がたくさんあって、迷うことはありませんでした。ただ、整備されている割に人はあまり入っていない印象です。

このエリアで自然に補給できるコンビニがあるのが豊能町だったので、そこまで歩いて補給をしました。泊まりは野営です。このあたりの泊まり方については後ろでまとめて触れますが、誰にも迷惑がかからない場所を探して、一晩休ませてもらいました。
2日目 箕面から東海自然歩道、そして泉原の里山へ
2日目は能勢町から島本まで。距離は約50km、朝5時ごろから夕方の4〜5時まで、12時間ほど歩きました。

歩き出してすぐに箕面の山に入ります。猿がいたりもしましたが、とてもよく整備されたきれいな森で、花博の記念の森もあって、気持ちよく進めました。やがて東海自然歩道に入ります。おおさか環状自然歩道は東海自然歩道と重なっている区間があり、そこを通って高槻や茨木の山々をつないでいきました。
この日いちばん印象に残ったのが、泉原(いずはら)のあたりです。棚田があって、石垣があって、軒先には大根が干してあり、農具が家の外に置いてある。生活がそのまま見える里山でした。




わたしは田舎の出身で、子どものころはそういう暮らしが正直あまり好きではありませんでした。でも今になってみると、あの体験は自分のなかの大事なピースになっていて、こういう風景を見ると懐かしさと一緒に、尊いものを見ているような気持ちになります。歩きの旅だからこそ、こうした風景を間近で見られる。とてもいい時間でした。
なお、東海自然歩道はかなりしっかり整備されているのですが、ポンポン山を境にそこから外れると、少しワイルドで荒れた道に変わります。大荒れというほどではないものの、東海自然歩道がいかに手をかけて整えられているか、外れてみて改めてわかりました。

この日の天気も良かったのですが、翌日は雨予報でした。しかも結構な雨。残りの約50kmは慣れた生駒方面で、島本から枚方を通ってロードをつなぐ区間も長い。雨のなかロードを50km歩くのはしんどいな、というのがあって、ここで作戦を変えることにしました。2日目の夜はいったんお店に戻って着替え、3日目はトレイルランニングのスタイルで行く、と。完全に街まで降りていたので、お店に帰ることにしました。その夜はお店で一晩を過ごしました。

3日目 豪雨のトレイルランニング
翌朝、雨対策をしてトレイルランニングのスタイルで出発しました。残りは約50km、うちロードが13kmほど。
これがとにかく長く感じる一日でした。ロードも長いし、雨はずっと降っている。春の爽やかさを感じる余裕はなく、何も見えない区間もありました。途中からは警報が出るのではないかというくらい、バケツをひっくり返したような雨になって、トレイルが川のようになっていました。わたしは山に行くと雨にやられることが多いのですが、今回は過去でも一、二を争う大雨でした。
それでも進むしかないので走り続けて、夕方前にお店に着きました。着いたころには雨も上がっていて、たった3日間でしたが、「旅が終わった」という感覚がありました。
着ていたメリノウールも、あれだけ濡れてしまうと何を着ても同じで、お店に帰ってすぐに着替えました。もしハイキングのスタイルのままだったら、間違いなくどこかで停滞しなければならなかったと思います。3日目はランニングスタイルに切り替えて正解でした。
持っていったもの
ザックは、ハイキングだった2日間はmacpacのケテを使いました。AzTec® 8oz canvasという生地で、耐久性のあるポリエステルにオーガニックコットンをブレンドした、シンプルで丈夫なバックパックです。荒っぽく使っても傷がつきにくく、そもそも壊れる要素があまりない。防水加工がされていない代わりに、ラミネートの剥がれのような心配もいりません。これから先もずっと使っていけそうで、旅の思い出をそのまま刻んでいけるような道具だと感じました。また使いたいと思わせてくれるザックです。

シューズは、歩きがメインだったので、ストンプロックスのトレルワームというベアフットシューズを選びました。レザーのベアフットシューズで、素足感覚に近いのですが多少の厚みもあって、歩いていてとても気持ちがいい。長い距離だと疲れる面はあるかもしれませんが、歩く旅にはこういうベアフットシューズもありだなと思いました。

パンツはStaticのDRIFTER LT PANTSです。厚すぎず、シルエットも良いので、街に降りてきてもそのまま使えます。気に入ってよく履いています。

そしてシャツは、今回が阪東さんと企画した旅だったこともあり、maunawearの半袖シャツを着ていきました。maunawearのシャツは、阪東さんが過去に行った旅やアクティビティをモチーフにしたもので、着ていると旅をしている感覚をさらに引き立ててくれます。気持ちが上がるシャツです。

今回はかなり装備を削り、スピードハイキングで距離を稼ぐぶん補給地点に早く着けたところがあります。一般的なコースタイムで歩く場合は、少し食料を多めに持つなどの準備をしたほうが、しっかりとした旅になると思います。
長い距離を歩くときは、できる限り軽い装備にしたほうが楽です。長旅であるほど軽さは武器になります。ただ、食料が足りない、雨に濡れた、といったことも起こるので、そこは取捨選択が必要です。どこまで削るかは季節や体力によって変わり、一概に何キロとは言えません。チャレンジしたいなら思いきって削ってもいいし、安心を求めて着替えを一枚足すのもありです。スタイルの問題なので自由に決めればいいと思いますが、いらないものを持って重くするのはもったいない。何が必要かは、お店で相談してもらえたらと思います。
これから歩く人へ
おおさか環状自然歩道は、山に登ること自体を楽しむというより、移動すること、旅をすることを楽しむ感覚の道だと思います。歩くのが好きな人、旅が好きな人には、とても合うはずです。ファストパッキングやスピードハイキング的に歩くのも面白いと思います。
エスケープできる場所は多く、補給も比較的あります。そして、これは歩いた後に知ったのですが、僕らが歩いた後に大阪府がきちんとした公式の地図を作っていました。エリアを4つに分けた地図で、これに従って歩けば危険な場所を避けられ、道が不明瞭なところもほとんどありません。こんな立派な地図ができているとは思わず、自分たちでも驚きました。この地図があれば、区間ごとでも通しでも歩けると思います。お店にも置かせてもらえそうな話があるので、これから歩く人は、まずこの地図を手に入れるのがいちばんだと思います。

熊野古道のように世界遺産として大きく注目されている道ではありませんが、大阪にも歴史はあります。道のことを調べてみると、さらに面白さが出てくるはずです。わたし自身もまだ勉強の途中なので、これから調べていきたいと思っています。
おわりに
歩いてみて良かったのは、近場でこんなふうに旅をする感覚で行ける場所があるんだ、と知れたことです。しかもすぐに帰ってこられる。実際、3日間と言いつつ、1泊はお店に帰ってきています。その気軽さも、この道らしいところだと思います。
今回の旅は、もともと「大阪のトレイルについて話すイベント」がきっかけでした。そのイベントで、大阪府の緑化を担当されている方々や、実際にこの地図を作った方、道を整備している方とお話しする機会があり、おおさか環状自然歩道の魅力を改めて知ることができました。事前に打ち合わせをしていたわけでもなく、地図ができることも、「大阪トレイル」として打ち出していく動きがあることも知らずに、わたしたちは勝手に歩いていたのですが、こうしてつながりが生まれました。これから盛り上がっていく道なのではないかと思います。
そして、ROCK STEPPERSはこの道のちょうど中間地点にあります。だからこそ、おおさか環状自然歩道について気軽に相談してもらえる場所にしていけたらと思っています。阪東さんが歩いた後半を、今度はわたしが歩いてみたいとも思っていますし、二人で「あそこが良かった」「あの道は危なかった」と話すのも面白かった。
おおさか環状自然歩道が気になった方は、ぜひ声をかけてください。装備のことも、道のことも、お店で相談していただければ嬉しいです。
