はじめに

週末だけお店に出勤しているシイナです。登山歴はざっくり7年、クライミングとハイキングが好きな25歳女子。トレランもやってます。

今回は1泊で逆鯖街道にソロでチャレンジしてきたので、その山行記録を紹介します!

チャレンジした理由(なぜ鯖街道? なぜソロ?)

25歳の誕生日、やってみたかったリストにあったソロでの山行にチャレンジすることを決めました。どうせなら自分の限界にちょっと触れるような、イージーじゃない旅をしてみたい。そんなとき、普段山選びの参考にしているソータさんの投稿で、ヘリウムビビィのようなシンプルな装備で野宿しているのを見て、「このスタイル、かっこいい!」と直感的に思ったのがきっかけでした。

ソロでここまで長い距離を歩くのも初めて、1人で泊まるのも初めて、しかも野宿スタイルという未知づくしの挑戦でした。

選んだのは「鯖街道」。昔、京都の左京区に住んでいたことがあって、スタート地点が馴染みのある場所だったのがまずひとつの理由。近畿のロングトレイルの中でもアクセスしやすく、2泊はちょっと怖いけど、1泊でならギリ挑戦できそうな距離。そしてなにより、ゴールの小浜で海が見られるっていうのが、最高のご褒美に思えたからです。

スタート地点出町柳の様子 青鷺いっぱい居る

 

鯖街道について

今回歩いたのは、京都から福井・小浜へ抜ける「逆鯖街道」。スタートは出町柳、ゴールは小浜。全長約80km、累積標高はおよそ2,300mで、トレイルよりロードの方が割合高め。

歩いたのは日曜と月曜。スタートして10kmほどのところでグラベルバイクの方と少し会話したのを最後に、なんと小浜の市街地に降りるまで誰とも会わず。登山道というより“ほとんど誰もいない長い道”をひたすら進むような感じでした。

ルート自体に技術的に難しい場所はあまりありません。整備された林道や舗装路も多く、道迷いの心配も少なめ。だからこそ、「誰にも会わず、ひとりで黙々と進む」時間がとにかく長い。これが思った以上にメンタルに効きます。ひとりでいることに慣れているつもりでも、静かすぎる道に心がざわつく瞬間が何度もありました。

流石に怖かった、廃村?みたいなところ

 

行動記録

DAY1|出町柳〜久多エリア(野宿)

1日目は予定どおり、朝8時に出町柳を出発。目指すは約40km先の久多エリア。道中は止まらずに歩き続け、昼食は歩きながら柿の種とハリボーグミ。たぶん、本当に1分も止まらなかったです。


花背峠あたり。意外と登りがキツい

初めての野宿だったので、寝場所探しに手間取ることも予想して、タイムスケジュールはかなり意識しました。八丁平を越えてからは緩やかな下りのトレイルが続き、少し体力に余裕があったので小走りで抜けたりして、気持ちよく歩けました。


もはや美しい、ぬかるみサーフェス


八丁平の後のトレイルの中で見つけた木、芸術

初日の目標地点、久多エリアで今夜の“宿”探しがスタート。山奥に入りすぎると山ヒルの心配もあったので、人の気配が少し残る場所、できれば空き家の軒先などを借りられたら…と思いながら歩きましたが、なかなか見つからず。ぶつぶつ独り言を言いながら「ここにするか、もうちょっと先まで行くか…」と悩んでいると、ちょうど集落の消防倉庫を見つけ、その向かい側の草地にビビィを張ることにしました。すぐそばには川、時々通る車の音、そしてわずかな街灯の明かり。「不安になりすぎない絶妙なバランス」の場所をなんとか確保。


こちらの消防倉庫の真横で野宿


初めての野宿スタイルがこちら(写真下)
OUTDOOR RESEARCHのヘリウムビビィに、Trail BumのGnu S Capeを組み合わせたシンプル設営。ビビィはオーナーに借りたもので、当初は「これでいけるかな?」と思っていたのですが、直前でオーナーに「絶対シェルターも持って行ったほうがいい!」と強くすすめられ、持参。結果、大正解でした。

荷物をシェルターの中に置けるし、外からの目線も少し遮れるので、安心感が全然違います。雨でも顔を出せるし、たとえ天気が良くてもシェルターはかなり心強い味方になると思います。


ホームレ…いや野宿だよ

晩餐はお店の4周年イベントのときに作らせてもらったカスタムUL弁当に、疲労回復のEAA、そして日本酒ミニカップとおつまみをプラス。あたたかいごはんを食べると、不安や孤独感が少し和らぐような気がした。とはいえ周囲の音も気になるし、怖いし、起きててもつらいだけかと思い、19時にはさっさと就寝。爆睡。


カスタムなのでニンニクもりもり入れたこと忘れててビビィ内激臭だった

 

DAY2|久多〜小浜(ゴール)

早朝4時半に起床。私どこでも寝れるのが強みなのでしっかり爆睡。すばやく装備を片づけ、歩き始めは5時ごろ。前日のEAAが効いてるのか体は超元気でした。
朝と夜の境目のような薄暗い空気、森にかかる朝露、静かな気配。この時間帯の森歩きは、なんとも言えず気持ちよくて、いいリズムで歩き出せました。

この日もおよそ40kmの行程。ただし、初日と違ってトレイルはわずか2割ほど。あとはほぼ舗装路。
特にラスト20kmが全て平坦なロードで、気の遠くなるような行程でした。


海外の山みたいな道でした、行ったことないけど


道に飽きすぎてる私

鼻歌まじりに歩ける時もあるけど、怖くて何も見ずに通過したい時もある、ずっと不穏。
加えて、1日目にヒルに食われたお腹は痒いし、何度かあった渡渉と前日の雨でドロドロになったサーフェスとで足裏が乾き切らず、コンディションも最悪。
峠に差しかかるまでは正直ネガティブな気分にでしたが、峠に入り、ようやくトレイルに戻ってこれたことで少し元気が復活。山楽しい!!そこからはとにかくゴールまで歩く、歩く、歩くだけ。


まあまあデカめな渡渉ポイント


いっぱい看板立ってました

小浜に近づくにつれて、足の裏と心の葛藤

小浜の市街地が見えてくると、残り約15km。
でももう足の裏は限界で、ストックにしがみつくようにして街を歩きました。

そんな中、奇跡のような出会いが!!

静かな道路を歩いていたら、1台の車がそっと路肩に停まり、中からインゼリーを持った女性が走ってきました。
「どこから来たの?」「どこまで行くの?」と声をかけてくださり、咄嗟に状況を理解できず、「ありがとうございますっっ!!」とお礼だけ伝えてその場を後にしてしまいました。
写真を一緒に撮ればよかったなと後悔。
でも、本当に嬉しくて、感動して、久々に人と話したこと、まさかこんな優しさに出会えるなんて。
これがトレイルエンジェルというものか。後光がさして見えました。


大感謝。

ゴール、そして達成感

私が勝手に決めた企画だからどこをゴールとしてしまっても誰も責めない。だけど私はやり切るのだ!!ともはや足裏の感覚は麻痺していたが、熱いパッションが私には残っていました。

そしてついに、小浜の町中に立つ「鯖街道起点」の看板が見えて、私は無事、80kmの鯖街道を踏破しました。

ゴールした後は小浜で食事したりビール飲んだり、海を見たり、お土産屋さんに行ったりして、小旅行気分。一人で行くとその街の人たちと自然とコミュニケーションが生まれるのも楽しいところですね。


お土産も入れてパンパンな22Lザック


レトロな小浜駅でした


レトロバスで帰路に着く、乗車後秒速で寝落ち

おわりに|初めてのソロ山行を終えて

女性ひとりでの初ソロチャレンジ。正直、たくさんの人に心配をかけたし、私自身も「ほんまにやれるのか」という不安がいっぱいありました。
でもその分、ルートや装備、必要な情報はできる限り調べつくして、準備万端で挑んだのがよかったんだと思います。
幸い、私の周りには山の師匠がたくさんいて、いろんなアドバイスをいただけたのも成功の鍵となりました。


歩いている間、ずっとひとり。道には飽きていましたが、景色や歩くことに飽きることはなかったです。歩けば歩くほど景色が変わるので豊かな気持ち。かたや、なんぼつらい気持ちや不安になろうが、打開するには、やはり歩くしか答えがないのです。日常の中で抱える葛藤や疑念をクリアにできるのもソロならではの気づきかもしれません。

歩いている間は本当に家に帰りたくなる場面がいくつもあったのに、終わってみるともう次の山行を考えているあたりが山猿ですね。

またどこかのマイナートレイルで、新しいチャレンジができるようにがんばりたいと思います!


小浜からその脚でオーナーと祝杯 元気

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2025/06/05